都区間の本当の課題

ほりこし秀生日記

区政・都政には専門的で奥の深い話もあって、「都区財政調整制度の仕組み」などは最たるものです。この制度の詳細を長々と書くと、学者の論文みたいになってしまうので、短文で解説・報告するのは難しいのですが、この制度を取り巻く、特別区23区議会の課題を少々書いてみます。たとえば、皆さんにも関心があると思われる”減税論議”について・・・

なぜ、台東区で独自に”減税”が実現できないのでしょうか?それは、「特別区制度」という地方自治法上の限界があるからなのです。  つまり、台東区は東京23区(特別区)の中の一団体に過ぎないという限界があります。  都区財政調整制度によって、東京都23区では固定資産税や法人住民税を各区の財源とせず、都区の共有財源としているのです。そして、「行政事業の歳出予定」と「区独自で予想される税収」との差額の部分を都からの交付で賄っているのです。だから、23区は都の下で”同じ釜の飯”を分け合う関係にあり、なかなか各区独自の減税政策を打ち出せないのです。たとえば、港区などの都心区から、減税めあてに高額所得者が台東区に転入したとします。すると一見、台東区に表面的な住民税収増があったように思えますが、都区財政調整制度の運用如何では逆に他の収入(都区財政調整交付金)が減額されることになったりします。現状では、都区間の財政調整は法律で定められているので、台東区の好きにはできません。実質的な基礎的自治体・独立した自治体を目指したいのも山々ですが、区税収入の減少傾向を都区財政調整交付金で補ってきたのが財政調整の歴史であり、相対的に東京都からの財政交付金に対する台東区の依存度は高くなっているわけです。

*地方制度改革の流れは?
ここで議論されるのが、長年にわたる「都区制度改革」であり、国と地方の中間にある都を排除して、特別区を考える地方制度改革の必要性も唱えられました。しかし、実際は「道州制論議」の盛り上がりのなさにも見られるように、なかなか都区間の問題を改善するのは難しく、未だに特別区は都の下部団体の様なのです。

*台東区は自分の足で歩けない
悲しいかな、現状において、もし台東区が現在の特別区の枠組みから離れ、多摩市部のような普通地方公共団体である「市」となった場合には、地方交付税交付金を受ける側に陥ることが明らかなのです。このように台東区のような23各区の財政は、都財政と構造的に密接不可分に結びついています。前にも述べましたが、財調制度の下におけるゼロサムゲームの当事者となる区同士が、台東区だけの減税政策に肩入れしてくれる可能性も低いのです。

*減税で台東区住民を増やすことはできない
なぜなら、台東区の減税によって台東区に人口が流入し、台東区の税収が増えれば、それは巡り巡って自分の区の税収が減り、都の交付金への依存度が加速度的に増えて行くから。この「負の連携」ともいえる都区間のシガラミがある以上、台東区独自の税制改正は困難なのです。まあ、その他にも、区と自治体の間に横たわる”課税自主権”の問題もありますが・・・・。

*財政調整は良い制度か?
理事者の中には「なんで都から独立する政策を考えるんですか?財政調整はいい制度なのにッ!!」と熱く語る方もおり、”基礎的自治体”の本来の意義を考える私には、何とも痛い御指摘です。親である都から独立しない生き方が、台東区の利益になるという都区財政調整制度。独立自尊を唱える政治家の心情としては、悩ましく、そして切ない都区間の歴史です。

Follow me!

コメント

PAGE TOP
タイトルとURLをコピーしました